本文へスキップ


熊本県町村議会議長会は

熊本県内31町村の議長で
組織されている団体です



町村議会トピックス

 

平成29年7月 総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書


議員選挙に「比例代表」や「複数候補者への投票」などの制度導入検討


 総務省の「地方議会・議員に関する研究会」(座長・大橋洋一学習院大学法務研究科教授)は7月、地方議会議員の選挙制度として、比例代表選挙や制限連記制(※)の導入、選挙区設置などを検討するべきとした報告書をまとめた。

※連記制・・・選挙人が複数の候補者に投票できる制度。

※制限連記制・・・連記制のうち、選挙人が議員の定数より少ない数の候補者に投票するもの。

 特に、市区町村議会は多様であることから、選挙制度を選択制とすることになじみやすいとし、選択手続として、議会の議決のほか、住民投票に付すことが考えられるとした。

 研究会は、昨年3月に答申された第31次地方制度調査会や総務省の過去の研究会において検討課題とされた事項など、地方議会議員のなり手を確保するための課題について、具体的に検討を行うため、昨年11月から審議が行われてきた。

【総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書】

委員名簿

概要

要旨

本文

参考資料


 地方議会の存在感を高める「実効的な代表選択」の必要性

 地方議会の現状として、議員数は減少傾向にあり、投票率も低下の一途であるなど、住民の関心の低さ、なり手不足は深刻な問題となっている。

 そうした中で、住民の関心を喚起し、地方議会の存在感を高められるよう▽選択ができるだけ容易なこと(投票容易性)▽政策についての実質的な比較考量ができること(比較可能性)▽選挙結果についての納得性が高いこと(納得性)▽有権者の投票参加意欲が高まること(投票環境)という観点から「実効的な代表選択」を可能とする選挙制度について議論を深める必要があるとした。


 
市区町村議会議員の選挙制度‐団体の規模に応じ多様なものに‐

 現行の市区町村議会議員の選挙は、指定都市等を除き、原則として市区町村全域を区域とする単記非移譲式投票制(※)を採用しているが▽団体の規模に応じてふさわしい選挙制度が異なる▽一部の大規模団体では、当選に必要な最低投票率が極端に低くなる傾向にあり、候補者の個人的つながりに依拠した選挙となる▽定数が数十名となることによる有権者の過大な情報コスト、などの課題があるとした。

※単記制・・・選挙人が1人の候補者に限り投票できる制度。多数意思が明確なかたちで示される一方、少数意見が反映されにくくなる。

※非移譲式・・・議席獲得に用いられなかった票(当選に必要な得票数を上回る投票など)を他の候補者に回すことができない制度。

 選挙制度を検討するにあたり、地方自治制度の根幹にある二元代表制との関係について考慮する必要があるとし、議会が権力創出の基盤となる議院内閣制に比べ、議会側から見た場合、多数代表制が有する多数派形成機能の必要性は相対的に低いとした。

 また、政策課題に対する意見や地域的なつながりといった、地域住民の多様な選好をより反映することに、地方議会独自の意義が認められるとした。

 それらを踏まえ、「実効的な代表選択」を可能とする選挙制度の案として、以下の(1)と(2)を基本としつつ、代替案である(3)を含め、以下の3案を検討するべきとした。

(1)政策・政党等本位の議会構成を促進する方向性

   →比例代表選挙を導入する案(中規模から大規模団体に親和的)

 (2)現行の地域代表性に配慮しつつ、議員間のグループ化を促すとともに住民のより多様なニーズを反映する方向性
→投票方法について制限連記制を導入しつつ、必要に応じて選挙区設置を進める案(小規模から中規模団体に親和的)

 (3)現行の地域代表制を基本的に維持しつつ、有権者の情報コストの軽減や投票環境の変化を
     促す方向性

    →投票方法について単記非移譲式(現行制度)を維持しつつ、選挙区設置を進める案(小規模団体における代替案)

 (2)と(3)の選挙区は▽設置指針を策定(法定)、または第三者機関を設置して審議し、各地方公共団体の選挙区の区割りの公正さを確保する▽最低得票率や比例制等選挙の性格を揃える観点から、各選挙区の定数は極力揃える▽各選挙区の定数は、有権者の情報コストや区割りの困難性との関係を考慮して決定すべき、との観点に留意して検討を進めるべきとした。


  都道府県議会議員の選挙制度-政策・政党本位の選挙へ-


 現行の都道府県議会議員の選挙は、選挙区を設置して単記非移譲式投票制を採用しているが▽都道府県の広域的・戦略的な役割に対応して議会に求められる政策形成機能を促進する観点とは必ずしも一致しない▽選挙区ごとに定数が大きく異なり選挙の性格が混在している▽一部の大選挙区では有権者が負う情報コストが高くなっている▽選挙区間での一票の格差が大きくなっている場合がある、などの課題があるとした。

 また、指定都市を擁する道府県の場合、道府県の指定都市の区域に対する事務権限は小さいにもかかわらず、選出される道府県議会議員の数が多くなっているという指摘もあるとした。

 それらを踏まえ、「実効的な代表選択」を可能とすることや、都道府県議会に求められる役割、指定都市を擁する道府県における課題や国政選挙との関連性に留意すると、都道府県議会議員の選挙は、比例代表選挙の導入案を検討するべきとした。

 このメリットとして▽比例代表選挙によって一般に促進される政策・政党等本位の選挙は、都道府県議会に求められる役割と整合的▽指定都市を擁する道府県で指摘される課題や、一票の格差など選挙区に関わる実務的諸問題(定数の設定、選挙区割りなど)を回避できる▽現状として、都道府県議会は政党化が十分に進んでおり、政策・政党等本位の比例代表選挙を円滑に実施できる環境にあり、国政との連動性が期待できる、とした。

 一方で、比例代表選挙を導入する場合、現行の選挙制度からの乖離が大きく、地域代表制が減少・消失することは、有権者の側にも戸惑いがあると考えられるとし、特に地域代表制に配慮する必要がある場合、選挙区選挙との並立制・併用制や、少数の選挙区を設置し地域別名簿による投票を採用するなどの方策があるとした。

選挙制度の選択制‐市町村は選択制、都道府県は一律比例代表制に‐

 地方公共団体が多様であることを踏まえ、それぞれ実行的な代表選択を可能にする選挙制度を選択可能とすることは意義があるとし、選択手続として、議会の議決のほか、住民投票に付すことが考えられるとした。

 市区町村議会は、多様な実態にあることから、選挙制度選択制になじみやすいとし、一方、指定都市と特別区は、大都市の性格が共通しており、一律の選挙制度(比例代表選挙)とすることも考えられるとした。

 都道府県議会、市区町村と比べ相違が小さいことから、原則一律の選挙制度(比例代表選挙)とし、特に地域代表制に配慮する必要性があると判断した団体は、比例代表制を基本とした代替案に限り選択制を認める余地があるとした。

 最後に研究会は、地方公共団体の選挙制度は、地方自治制度のみならず、政治面へも大きな影響を与える事柄であり、今後、当事者である地方自治関係者や、国会、政党をはじめ各方面で幅広い国民的議論が行われることを期待したいと締めくくっている。

バナースペース

熊本県町村議会議長会

〒862-0911
熊本市東区健軍2-4-10
熊本県市町村自治会館本館6階

TEL 096-365-0400
FAX 096-365-1115
mail gichokai@trust.ocn.ne.jp